姫路城は国宝かつ世界遺産。構造も複雑かつ実用的な部分も多く、中国の影響もあるのかどことなく洗練された感覚のあるお城。何度行っても気づかなかった、だれもがスルーしがちなポイントを、今回、城郭研究家の堀田浩之氏によって知ることとなる。
マインドマップにて、過去堀田氏がコラム等でまとめていた姫路城の関連事項や調べたことをまとめている。お時間の無い方はこちらの図を参考に。

姫路城、黒田氏関係の石垣スポット 下山里曲輪

石垣は初期黒田氏の第Ⅰ期~明治以降の修復の第Ⅴ期あります。最初に紹介するのは下山里曲輪の二段石垣!
高石垣の技術は非常に難しく、初期の石垣で高さを出すためにも二段構成という説も。石の大きさにもかなりばらつきのある野面積み。ここのポイントが「鋭角ではないゆるやかなカーブ」。姫路城の最初からのコンセプト「自然地形を活かす形」がここにも現れています。(ちなみに、西の丸にも自然地形にあわせたカーブを描く石垣は存在しています)
石垣のⅤ期とは?
I期
羽柴秀吉改築以後の豊臣時代。(黒田氏)野面積で隅角部の算木積は未発達。墓石や古墳の石棺などを再利用した転用石も多く見られる。
II期
関ヶ原合戦の勝利で姫路へ入った池田輝政。慶長6年(1601)以降。隅角部に長方形の石を長短組み合わせた算木積も。「扇の勾配」はこの時期。
III期
元和4年(1618)頃。本多忠政の時期。西の丸増設。
IV期
江戸時代。補強・修理に伴う石垣。
V期
明治時代以降の修理石垣。
大手の線に実は意味があった!広大な大手筋

堀田氏の足元に、不自然なグレーの線があるのがわかるだろうか?これ、じつは「大手筋」のラインだった!城の守りを固める複雑怪奇な構造印象もある姫路城だが、「見せる城」としての意識も垣間見える道の広さ。これを体感するために、整備時に入れてくれたらしい。
下山里曲輪へ向かう途中、広大なお堀 米蔵があった?内船場蔵南石垣

天守に近いこの堀、かつては米蔵が並んでいたらしい。この石垣も、Ⅰ期といわれている。天守にほど近いこの部分までこの広さの堀が作られていることも謎が多い…
入城口のチェックポイント!多様すぎる外国語のパンフレット

受付をすませ入ったところにあるお城パンフレット。実はここも姫路城の凄さが…!通常は日本、中国(簡体字、繁体字)、韓国、英語が定番。ところが、姫路城には、ウクライナ語にロシア語に、スペインにドイツにベトナム…と、かなりの数取り揃えている。
配置もぜひ見ていただきたい。なんとロシアの隣にウクライナ。ウクライナ語のパンフレットは建国三〇周年記念で2021年に追加されたようである。早く戦争、終わってほしい。
よくみて!3色にわかれた石垣 三国堀

姫路城は、「姫山」と「鷺山」の2つの山で構成された「平山城」である。そのことがよく分かる場所がこの三国堀。山と山の境界線で石垣の積み方が変わっている。もともと、白く美しい様から「白鷺城」という別名説はあったのだが、堀田氏は、もう一つの説も紹介してくれた。その答えが、この写真にいるのである。
そう、「鷺」。もともと自然豊かな山、鷺が多く住んでいたという由来。姫路で長く学芸員として関わっている堀田氏曰く、姫路城域内で鷺を目にすることは少ないとのこと。希少な一枚となった。
入城口から近くにある門 高麗門は、とても合理的?!

木で作られたこの戸。雨の多い日本では、雨ざらしになったときのリスクも多い。そこで屋根を大きくして濡れない対策をする場合と、全開の場所に扉用の屋根を作ってしまう場合がある。大坂城など多くの城は屋根ごと大きいのも多いが、姫路城にはこの「高麗門」形式がある。
高麗門形式のメリットはなにか?やはり屋根瓦の枚数などの節約、資材も少なく済んでいるから?様々な憶測も生まれてくる。個人的な見解だが、右上の壁に鉄砲狭間が見受けられるので見通しの良さを重視したと感じている。
遠くからじゃないとわからない…石棺を利用の「かがみいし」

多くの転用石が使われている姫路城。特に巨大なのが古墳に使われていた「石棺」。姫路~加古川など、播磨地域も数多くの古墳が発見されている。しかも、兵庫県の加古川下流右岸(高砂市)から、流紋岩質溶結凝灰岩の石材通称「竜山石」は古代から石棺などにも使われる石で有名。石棺の配置場所が、この写真では中央部、3段のうち一番上の石垣で最も大きく見える白っぽい石。
これ、実は天守に近づきすぎると見ることが難しくなる。堀田氏の解説だと、あえて離れた場所から見てもらいたいからここに置いたという考え方もあるようだ。石棺をみんなから見える場所におき、「こんな巨石も使っている」PRだったのか…
上に何を置いていたのかわからなかった謎の石積み

この写真の違和感はいくつかある。まずいちばん手前に積まれた高さの低い石垣。上は土が斜めになっている様子で、なにか建物があった様子はない。そして石垣の真ん中に開いた穴。
この謎の石垣について、堀田氏は石垣の崩落防止の石積と話す。ここにこの高さの石垣を作って何かしらの門?を作る意味も無い。石垣の崩落を止めるために石垣をつくるというのは、鳥取城の天球丸できいたことがある。そして、穴については、「排水設備」らしい。石垣を保つために雨水をうまく排水するルートをつくっておくことが必須であり、この穴は何箇所もみうけられる。
秀吉の関係か、謎の白木戸 との四門 との一門

現在の登城口門とは離れたとの門。搦手側で、防備は固め。昔は火薬庫があり枡形もある。昔は入れたが、今は入れない。(限定で公開されるかも)写真では見えにくいが、白漆喰の塗られていない珍しい木の扉がある。
との一門、姫路城の櫓門で唯一白漆喰が塗られていない。「昭和の大修理工事」の解体によって漆喰を塗っていなかったことがわかったため、素木造りにもどしてあり、なぜここだけそうなっているのかはわからない。秀吉に関係しているという話もあるが、妄想で楽しむことに…
鉄砲狭間の配置は謎が多い 不必要な部分にはつくらない狭間も…




今回かなり時間をかけて解説してくれたのが、敵を迎撃する際につかう鉄砲、弓矢などを打つための穴、「狭間」。形は様々で、なぜか横長のも配置されていて用途不明なものまで。
上の写真は、あえて狭間を作らない部分の裏側はヘアピンカーブの通路ということを示した。道に立って鉄砲を構えることは確かに無駄…

先ほど紹介した三国堀付近。天守に近い側とそうでない側、あきらかな差。横からいかけたいという意思も感じられる。
来たぞ来たぞ転用石 はの門石灯籠の基礎部分

はの門の脇にあった…石灯籠の基礎。足元ではあるが門のすぐ横にある。なぜあるのか?天守には近い。宗教的なおまじないの意味などあったのか?妄想のはんいではある。

これも怪しい。五輪の塔か?

石垣の石が足りないという声かけで老婆が割れた石臼を提供した説、「姥ヶ石」。これも、どうだかなんとも言えず、目立つ位置でもあるので印象操作のための作り話という説も。積み直しの際に別場所からもってきた話もあるので、築城当初からここにあったわけではない。
寺院があった部分を残している?一箇所だけの版築壁


一箇所とても不思議な感じ、古代の技術、版築(はんちく)。現存する版築壁はとても少なく、西宮神社などお寺や古代史跡に関連するもの。版築とは、壁を頑丈にするために何層も土を突き固めて作る方法。平城京の壁なども、その工法といわれているが、あえてこの場所に一箇所。山の一番上の部分がこの場所で、そこに宗教的な意味合いでつくってあるという話も。
天守内部に見える、武器掛け?謎の竹…

天守の各階の上の方に注目!防備のための施設なので、武具掛けが多くある。そこにも不思議が… 鉄の引っ掛ける部分は、なんとなく想像できるが、この一回使ったら折れてしまいそうな竹の部分… これは堀田氏もわからないらしく、他のお城など参考にして考えたいと思う。
これが、メンテ窓… 天守から用意に屋根に出れる構造がすごい

高層建築の難しさ、これは維持管理。台風などで破損した屋根…通常なら足場をまず組んで、そこから修理は始まる。ところが姫路城は違う。こういったメンテ窓が存在。格子で出られない部分がある中、外に出ることのできる窓…! 過去、屋根の修復で使ったこともあったらしい。姫路城ほどの高さだと足場も大変だが、これでスピーディーに屋根部分も直せる。メンテに意識の高い姫路城、さすが。
姫路城に来て楽しめるポイント

今回は城の構造をメインに記事にしてみたが、西の丸の刻印石や石垣など、まだまだ書き足りていない。(随時更新します)
私自身も姫路にはもう10回以上登城しているが、それでも毎回新しい発見をしている。姫路は知的好奇心をくすぐってくるだけでなく、姫路城おもてなし武将隊がいらして、甲冑でお出迎えしてくれる。写真の方もそう。とっても楽しい場所!
ついでに食べ物の話も付け加えておく。有名なのは姫路おでん、ひねポンだが、そこに「どろ焼き」も加えてみる。
どろ焼きは、「喃風」お店から誕生したグルメだった

姫路が中心のお店、「喃風グループ」は、鉄板焼が美味しいお店。そこで子供の声から生まれたのが「どろ焼き」。食感は明石焼き(兵庫県民はたまごやきと呼ぶ)とオムレツの間くらい。
創業者が、客の子どもの「たこやき食べたい」というオーダーを受け、たこやき型がなかったので鉄板でそれっぽく作ったのが始まりだそう。裏メニューから人気になって広がっていく。どろ焼きは、明石焼きみたいに出汁とネギがついてくる。味変でソースも美味しい。
明石の海産物とお酒も美味しいが、もうすこしリーズナブルにさくっと飲むなら「喃風」さんはおすすめ。基本的な姫路グルメは食べられる。(神戸など他の地域のお店は不明)
美味しく楽しい姫路、まだまだ尽きない… 随時更新していく…